水彩色鉛筆と油性色鉛筆、どっちを選ぶ?色鉛筆の違い
水彩色鉛筆と油性色鉛筆、どっちを選ぶ?色鉛筆の違い>
あれは20年以上前のこと。
お小遣いがあったので、思い切って「高い色鉛筆買ったろ!」と思って伊東屋に行った時のことです。
目の前には、水彩色鉛筆と油性色鉛筆の二つがありました。
初めて見る水彩色鉛筆を前に、私が考えたこと、それは
「普通に色も塗れる上に、
kazikaeru
水にも溶けるなら、
水彩色鉛筆を買う方が
お得なんじゃないか?」
と、いうことです。
貧乏くさいですか?でも、そんなもんですよね。
ところが、使ってみると、とても使いにくいのです。
水彩色鉛筆をドライで使うと?
水筆も持っていなかった私は、水彩色鉛筆を水で溶かすのが面倒で、ほとんど「ドライ」の状態で使っていました。
そうすると、なんとなく色がくすんでいるし、混色もいまいち。何より描き心地が悪い。
「ちっ。使いにくいな」
と思いましたが、なんせ高級な色鉛筆ですから、自分の腕のせいだ!と言い聞かせて、無理やり使っていました。けれど、やっぱり使いづらくて使わなくなっていったのです。
そうして、伊東屋で購入した、1万円近くする「ファーバーカステル・アルブレヒトデューラー」は棚の奥にしまわれて、いつものトンボの色辞典を使い、「んだよ、こっちの方がいいじゃねーか」となったわけです。
どうやら、油性色鉛筆と水彩色鉛筆の違いは、水に溶けるかどうか?だけではなさそうです。そんなわけで、このページでは、「油性色鉛筆」と「水性色鉛筆」の具体的な違いを調べて見ました。
水彩色鉛筆と油性色鉛筆、どっちを選ぶ?色鉛筆の違い>比較
1、水溶性の色鉛筆には、「筆」のマークがついている。
写真は、ファーバーカステルですが、他のメーカーでも同じです。水彩色鉛筆には筆のマークがついています。分かりやすい目印ですね。
2、水彩は6角、油性は丸い木軸が多い。
水彩色鉛筆は六角形の木軸です。それに比べて油性色鉛筆の多くは丸い木軸です。六角形の木軸は握りやすく、力を入れやすい形です。油性色鉛筆は、芯が柔らかく、折れやすいため、握った時に力が分散するように、木軸が丸くなっているらしいです。水彩色鉛筆の芯は折れにくいのですかね?それとも油性のようにグリグリと圧をかけて塗らないからですかね?分かりませんが、油性と水溶性色鉛筆の使い方の違いを意識して、形状を変えているのでしょう。
3、水彩色鉛筆は、混色や塗り重ねが苦手
まず、水彩色鉛筆は、基本的に定着が弱く、重ね塗りが苦手です。多くは、2〜3色程度塗り重ねると、塗りカスが出て、色が乗らなくなってしまったり、汚くなります。ダーウェント・ウォーターカラーやインクテンス 、シャチハタ(ファーバーカステル)の赤缶などは顕著です。重ね塗りもそれなりにこなす水彩色鉛筆もありますが、それでも同じグレード&メーカーの油性色鉛筆に比べると乗りが悪いです。
ファーバーカステルのアルブレヒトデューラー(水彩)とポリクロモス(油性)の重ね塗り比較
上の写真は、水彩と油性の色鉛筆を塗り重ねをして、顕微鏡モードで写真を取ったものです。面の状態が良く分かります。アルブレヒトデューラーは、水彩の中では重ね塗りができるタイプの色鉛筆ですが、顔料が固まってくっついてしまって、マダラになっています。一方で、油彩色鉛筆の方は、均一の粒子が美しくおさまっていて、ピタッと紙に張り付いている感じです。
水彩色鉛筆で使われているバインダー(紙に定着させるための接着剤)の力が、油性に比べると弱いのかもしれません。
このように、油性の色鉛筆は、重ね塗りしている時の感触も、力の強弱がつけやすくて、キレイなグラデーションを作ったり混色ができます。水彩色鉛筆では、油性色鉛筆のような混色は難しいため、水溶きをしながら混色をします。
4、発色の鮮やかさが違う
油性色鉛筆は、塗ったままの色が仕上がりの色ですが、水彩色鉛筆は、水で溶いた時の色が仕上がりの色です。水溶きしない状態でも、あまり印象が変わらない水彩色鉛筆もありますが、ほとんどの水彩色鉛筆は、水で溶いた方が鮮やかな色になります。例えば、ダーウェント・インクテンス などは、ドライのままだと、色の判別がつかないぐらいに彩度が低い水彩色鉛筆です。また、ファーバーカステル・アルブレヒトデューラーやユニ・ウェオーターカラーも水溶きすると、パッと明るく発色する水彩色鉛筆です。
5、塗り心地が違う
水彩色鉛筆は、芯が柔らかめの色鉛筆が多いです。芯が柔らかい方が水に溶けやすいということでしょう。スタビロ・オリジナルやカランダッシュ・プリズマロなどの硬質な水彩色鉛筆もありますが、多くは柔らかめです。
また、水彩色鉛筆は、少し紙に引っかかる感じの描き味で、カサっとしたものが多いです。くらべると油性色鉛筆は滑らかなものや、サラッとしたものなど多様性があり、そこも選ぶポイントになっていたりします。
水彩色鉛筆は油性色鉛筆の代わりになるのか?
結論としては、代わりにはなりません。「ドライで使う」ことに特化した油性色鉛筆以上の性能は、水彩色鉛筆には無いのです。なので、水彩色鉛筆を購入したら、やはり、ドライでだけ使うというのは「もったいない」でしょう。
しかし、水彩色鉛筆にも色々とタイプがあって、ダーウェント・ウォーターカラーやインクテンス といった、水で溶く使用方法に重きをおいたものから、「ドライ」でも使いやすいものもあります。このあたりの違いが、水彩色鉛筆を選ぶポイントにもなるでしょう。
要するに、水彩色鉛筆は油性色鉛筆の代わりにはならないけれど、両方の特徴をバランス良く取り込んだ水彩色鉛筆もある。ということです。詳しくはこちらの「水彩色鉛筆、おすすめとダメなやつ15種を比較」へ
水彩色鉛筆と油性色鉛筆の違い・まとめ
水彩色鉛筆 | 油性色鉛筆 | |
色の違い | ドライのままだとちょっとくすむ。 水で溶かすと発色が良くなり、 乾くと少し落ち着く。 | 見たままの色 |
混色 | コントロール性が良くなくて、 繊細な混色が難しい。 | 力の強弱がしやすくて、 繊細でキレイな混色が作れる。 |
重ね塗り | 苦手 | 得意。苦手な色鉛筆もある |
感触 | 柔らかいが カサっと引っかかる感じ | 滑らかだったり、サラッとしていたり 多様性がある。 |
表現の 特徴 | 色の滲みやぼかしなど 水彩特有の軽やかさがある。 | 色を重ねられるので、 深みと厚みのある画面が作れる。 |
紙 | ツルツルすぎる紙には向かない。 水を多く使うと紙が波打ってしまったりするし、 本格的に描くなら「水彩紙」が必要。 水彩色鉛筆でおすすめの紙 | どんな紙でも比較的着色できる。 油性色鉛筆でおすすめの紙 |
その他 | 表現の幅が広いので、 使いこなすのは難しいが、 新しい表現を模索できる。 水、筆、紙などの準備が面倒 | 水を使わないのは手軽でいい。 それほど難しい使い方もないので、 子どもから大人まで気軽に使える。 |
おまけ<ドライで使っても良さそうな水彩色鉛筆>
・LYRA レンブラントアクアレル
リラから出ている、専門家用の水彩色鉛筆です。水溶けはあまり良くありませんが、重ね塗りができて、ドライでもウェットでも色の印象があまり変わりません。そして、色が濃いです。芯のやわらかさも程よく、感触も良いので、ドライでもウオッシュでも違和感なく使えます。木軸がナチュラルで、オシャレな色鉛筆です。
LYRA Rembrandt Aquarell Artists’ Colored Pencils, 価格:16,506円 |
・カランダッシュ・スプラカラーソフト
水溶けが悪い水彩色鉛筆ですが、あえて線を出すというコンセプトがあるようです。そのせいか、ドライでの使用が扱いやすく、重ね塗りもできるし、色の印象も変わりません。明るくてキレイな色が、じわっと滲む感じが良いです。
【メール便可】 カランダッシュ CARANd’ACHE 水溶性色鉛筆スプラカラーソフト12色セット(缶入り) 価格:4,070円 |
・ステッドラー カラトアクェレル
これも比較的重ね塗りができて、色の印象が変わらない色鉛筆です。やや滑らかさに欠けますが、ステッドラーらしい塗り心地です。色が素直なので扱いやすいです。専門家用ではありませんが、耐光性も高く、プロ使用に十分応えてくれます。
今話題の「コロリアージュ」「大人の塗り絵」に最適ステッドラー カラトアクェレル125水彩色鉛筆60色セット 価格:11,880円 |
・ステッドラー ノリスクラブ
塗り絵向きのコスパの良い色鉛筆です。この製品は、水彩に比較すると、油性はいまいちです。しかし、水彩の方は、柔らかく、発色も良いので、価格が安い割には使い勝手の良い色鉛筆です。重ね塗りはそれほどできませんが、塗り絵なら不足に感じることはあまりないはずです。
ステッドラー 水彩色鉛筆ノリスクラブ24色セット あす楽対象[メール便:80](絵具 色鉛筆・画用木炭) 価格:1,980円 |
・サクラクレパス SAKURA COLOR PRODUCT
繊細な線が引ける色鉛筆です。柔らかいですが、芯先がしっかりしているので、細い線で繊細なグラデーションを描くことができます。水溶きも比較的良いです。価格なりの発色ですが、コスパは良いです。
サクラクレパス SAKURA COLOR PRODUCT [水彩色鉛筆] 水彩色鉛筆12色 EPY12[EPY12] 価格:1,570円 |