初心者向け色鉛筆画講座③補色と黒やグレーの使い方
初心者向け色鉛筆画講座③補色と黒やグレーの使い方,色鉛筆のセットを買うと必ず入っている色、「黒、グレー」。使い方がわからない人は多いのではないでしょうか。主としてグレートーンは彩度の調整に、黒は色を暗くするために使いますが、色々な色で黒やグレーを作ったり、単色の色と比べたることで、色への理解が深まり、表現の幅が広がります。
用意するのは、色鉛筆と紙です。紙はちょい厚めの上質紙でOKです。普通に紙に色を塗っても良いですが、ワークシートも作ってあるので、プリントアウトしてそれに色塗りしてもOKです。
今回のワークシートはこちら↓↓↓
初心者向け色鉛筆画講座③補色と黒やグレーの使い方/混色の黒とBLACKとの違い
色の3原色を均等にまぜると「黒になる」と言います。理論的にはそうであっても、実際に絵具で混色してみると、黒に近い色にはなりますが、「完全な黒」にはなりません。「青っぽい濃いグレー」になります。これは色鉛筆でも一緒です。重ね塗りがどれだけ得意な色鉛筆でも、真っ黒を作ることはできません。
しかし、そうやって混色で作った黒(正確にはグレー)は、単色の黒よりも複雑で透明感のある色になります。実際に「黒」と「混色で作った黒」を比較して、その違いを見てみます。
色鉛筆の黒は平面的で「物質的な黒」を感じます。対して、混色で作った黒は、空間的な暗さを感じる黒です。物質的に黒いものを表現するには単色の黒が良さそうですが、暗い夜空や闇を描くには混色で作った黒の方が良さそうですね。
黒を混色で作るには、3原色(シアン、マゼンタ、イエロー)を均等の量で混ぜ合わせるか、補色の掛け合わせで作ります。色鉛筆は絵具とは異なり、混色が難しいので、一度の重ね塗りでパッと黒くなったりはしません。何度も塗り重ねて黒に近づけていきます。どのぐらいの「黒っぽい色」が作れるか?は選ぶ色や使っている色鉛筆の質で異なります。ワークシートを使って、補色の混色を試してみましょう。
図1は「カラーチャートを作ろう」で作成した色環です。マンセル色相環がベースです。AとA’、BとB’のような向かい合う色を混ぜると色が濁って、黒っぽい色ができます。自分で色相環を作ってある人は、それを参考にしながら補色を混色してみてください。(PCCSや12色の「色相環をつくろう」はこちら)
color1(参考色名:A,B) | color2(参考色名:A’,B’) | |
補色1 | Y:黄色 (参考色名:RawUmber, Bronz, yellow, Cream,Khaki) | PB:青紫 (参考色名:Ultramarine, Cobalt blue, prussian blue, sax blue, Navy,) |
補色2 | GY:黄緑色 (参考色名:Holly green, Grass green, Apple green,lreaf green) | P:紫色 (参考色名:violet,Lavender, Mauve,Purple) |
補色3 | G:緑色 (参考色名:Viridian,Emerald green, Cobalt green) | RP:赤紫 (参考色名:Magenta, Rose red, Dark Carmine,Burgundy) |
補色4 | GB:青緑 (参考色名:Peacock Blue,(Turquoise Blue)) | R:赤 (参考色名:Scarlet,Poppy red, Signal red, Maroon,Salmon pink, Burnt Sienna,) |
補色5 | B:青 (参考色名:Cerulean blue, True blue,Navy, Turquoise Blue, (Cobalt blue)) | YR:橙色 (参考色名:Orange, Raw sienne, (Vermillion), Apricot, Beige, (Sepia)) |
上の表は、補色の組み合わせです。明度はまぜこぜですが、参考の色名を記載しています。
Step1、補色の組み合わせを探す
<ワークシートのやりかた>
自分の持っている色鉛筆で、補色の関係にあるものを知ることが目的です。補色を探す方法は色々ありますが、実際に塗ってみてどの程度の色味になるのか?を体感するのが一番実践的です。
①色鉛筆のセットの中から純色だけを取り出す。(白の混じっていない色を選んでください。)
②色鉛筆を色相順に並べる。
並べた色鉛筆を大まかに「黄色」「黄緑」「緑」「青緑」「青」「青紫」「紫」「赤紫」「赤」「橙色」と10の色相に分けます。
必ずしも、すべての色相があるわけではありません。RP(赤紫)やP(パープル)は色鉛筆によっては入っていない場合があります。これらの色は、耐光性が低いことが多いため、メーカーがそうした色をあえて入れていないからです。その場合はRP(赤紫)にはカーマイン、P(パープル)にはバイオレットやウルトラマリン(コバルトブルー)などを、とりあえず選んでおきます。
③代表色をワークシートに塗る。
各色相から一本づつ代表色を選びます。色相環(図1)を見ながら、なるべく5Yとか5Rなど、「5」がついている色に近い色を選びます。赤ならスカーレット、橙色ならオレンジです。無い場合は近い色を塗ります。この時点ではあまり神経質にならずに、適当に当てはめていき、この後の混色で上手くいかなかったら修正していきます。
④混色する
色鉛筆の混色は、下に塗った色が強く出るので、暗くしたい時は暗い色を先に塗り、明るくしたい時は明るい色を下に塗った方が上手くいきます。
混色した時に、あまり彩度が落ちずに、色がどちらかに偏ったりする場合は、隣の色を混色するなどして修正します。上の写真は、はじめにPBにコバルトブルーを入れていましたが、混色すると上手くいかなかったので、隣のバイオレットを重ね塗りしたところ、黒に近づきました。これによって、カナリーイエローには、コバルトブルーとバイオレットの混色の方がより良いことがわかりました。
こんな感じで、自分の持っている色鉛筆の「どれが補色の関係か」を理解するのがSTEP1の目標です。
※混色は黒に近くなるように何度も塗り重ねます。カランダッシュ・パブロなどは、塗り重ねるごとに色が濃くなっていくので、補色の組み合わせだけで、かなりの黒さまで行けるはずです。補色で作った黒は、なんとも言えない雰囲気のある色です。たとえば、暗い部屋の中だったり、アスファルトにうつる影だったり、様々なシーンで使用できます。
Step2,茶色と濃い青で、黒をつくる
補色の組み合わせは上手くできましたか?思ったよりも黒くならない組み合わせもあったかと思います。色鉛筆で、最も濃い黒が作れる組み合わせは、補色AとA’のような暗い色の補色の組み合わせです。ダークアンバーやバンダイクブラウン、セピアなどの濃い茶色と、ウルトラマリンやインディゴブルーなどの濃い紫よりのブルーを混色しましょう。
<ワークシートのやり方>
色鉛筆講座②で作成した、色鉛筆のカラーチャートから、最も濃い茶色をベースに塗ったあと、ブルーを上から重ねます。色鉛筆によっては、プルシャンブルーのような濃い青よりも、明るいコバルトブルーの方が黒に近くなったりすることがありますので、いくつかのブルーを試してみましょう。
この黒は、瞳の色や髪の毛の色、強い光の影などで頻繁に使用しますので、気に入った黒の組み合わせは覚えておきます。
Step3,補色で明るいグレーをつくる。
STEP2よりも明るいトーンの組み合わせでグレートーンを作ってみます。ピンクやライトブルー、クリーム、ベージュなどの白が混じった色を、純色と混ぜ合わせたり、筆圧で薄塗りするなどの工夫をして、柔らかいグレイッシュトーンを作ってみます。コーラルレッド+ビリジャン、ペールバーミリオン+ライトアクア、バイオレット+アップルグリーンなどはオススメの組み合わせです。
明るいトーンの混色は優しく丁寧に塗るのがコツです。上手く混色できない時は、こちらの「混色のコツについて」を参考にしてください。
Step4,黒の使い方
①黒+αで強い黒をつくる
単色の黒は意外に浅い色です。印刷でも、真っ黒を表現する時は、単色の黒だけではなく、他の色を30%分ほどプラスして色を指定します。黒に色をプラスしてより濃い黒を作ってみましょう。ビリジャンやウルトラマリン、バイオレットなどの濃い色をプラスすると、より濃い黒になります。2色プラスしてみても良いです。
重ねる色が不透明だと、暗くならずに明るくなってしまいます。色々な色を塗り重ねて比べてみてください。特にカリスマカラーは不透明な色鉛筆なので、明るくなりがちです。インディゴブルーを試してみてください。
黒に色を足して作った黒は、インパクトのある強い黒です。メリハリのある画面にしたいときに役立ちます。
②彩度を落とさずに、明度だけを落とす
今度は、先ほどとは逆の重ね方です。好きな純色を塗った後に、黒を重ねてみてください。色の彩度を落とさずに明度だけを落とすことができます。先に明るい色を塗っているので、①の時のような強い黒にはなりません。
Step5,グレーの使い方
絵を描いているときに、「彩度を落としたい。」と思う場面はよくあります。色鉛筆は大体、純色が多いので、常に彩度調整は必要になります。例えば、風景では、手前のものは彩度が高く、遠くのものは彩度を低くしますし、自然の色に近づけようと思うと微妙な彩度調整も必要です。また、絵の全体の色調を見て、「ちょっと元気すぎるな」と思った時は全体の彩度を下げて落ち着いた感じにします。
①補色とグレートーンの違い
補色やグレートーンは「彩度調整」に使用することができます。黒の違いと同様に、補色で彩度を落とした時とグレーを使って彩度を落とした時では色が異なります。まずはこの違いを比較してみましょう。赤、青、紫色を選んで、それぞれ補色とグレートーンで彩度を落としてみます。
補色では複雑な色がかけ合わさったグラデーションになります。グレートーンだとクリアな印象のグラデーションになります。
②明度を変えずに彩度だけを落とす方法
色鉛筆セットには何色のグレーが入っていますか?36色セットだと2本ぐらいのグレーが入っていると思います。専門家用の色鉛筆はグレーの暗さを50%や30%といったパーセンテージで記載しています。これは色の明度です。彩度を落としたい時は、その色と同じ明るさのグレーを重ねると、明るさを保ったまま、彩度だけを落とすことができます。色の明度はマンセル値によってもわかりますが、おおよそ、スカーレットやカーマインといった彩度の高い色のトーンは40〜50%のGreyを、ペールカラーは20〜30%のGreyを使うと良いです。明度が合っているときは、重ねた時に違和感なくすんなりとなじみます。
初心者向け色鉛筆画講座③補色と黒やグレーの使い方,まとめ
補色やグレートーンの使い方を知っていると、色の幅がぐっと広がります。特に補色は、覚えるまではちょっと面倒ですが、一度覚えてしまえば、かなり便利なものです。補色の混色で作ったグレーなんか、とてもキレイでいつまでも重ね続けたくなります。
作った色は、カラーチャートと一緒に管理しておくと便利です。
グレートーンや黒も、今回は触れていませんが、色々な種類があります。
グレートーンは、Cool grey, Warm grey, French grey, Cloud greyなどの種類があり、それぞれ色が異なります。黒は、同じBLACKでも、色鉛筆によって違いがあります。私の知る限りで、もっとも強い黒は「カリスマカラーの黒」です。すごく黒いです。ホルベインは少し茶系の柔らかめの黒ですし、カランダッシュ・パブロはとてもニュートラルな色の黒です。イラストレーションを描く方なんかは、「もっと黒い黒があればいいのに」と思うことも多いので、その場合は、カリスマカラーの黒だけを購入するのも良いと思います。
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色鉛筆画講座タイトル | 内容 |
①道具をそろえる | 色鉛筆画を描くための道具と選び方を説明。 おすすめの道具なども紹介しています。 |
②カラーチャートの作り方 | 色鉛筆を購入したら、一番はじめにやること。カラーチャート作り。 必ず役に立つ3つのカラーチャートの作り方を解説します。 色鉛筆別マンセル値一覧もあります。 |
③補色と黒やグレーの使い方 | ワークシートに色を塗りながら色への理解を深めます。 カラーチャートを使って、補色の混色を行います。 補色の説明なども掲載。 黒やグレーを使った、彩度や明度の調整の仕方も解説します。 |