ぺんてるとサクラのオイルパステル比較
サクラの「クレパス・スペシャリスト」とぺんてるの「オイルパステル forArtist」を比べてみます。どっちを買おうか迷ったことがあるので、違いを調べてみました。
他のオイルパステルについてはこちら。日本メーカーのオイルパステルは、この2つとホルベインが有名ですが、中でも老舗文具メーカーのサクラカラーとぺんてるは、子どもの頃から親しみがあるメーカーだと思います。
画材屋さんに行くと、オイルパステルコーナーにこの2つのメーカーが並んで置いてあって、価格帯も同じだし、見た目の形も似ているので、どっちを買うか悩んじゃいます。
けれど、実はこの2つ、結構違いがあるんです。作品の仕上がりに影響するぐらいな違うので、「似ているからどっちでもいいやー」ではなく、しっかりと検討する方が良さそうです。
ちなみに私は、「どっちでも一緒じゃん?」と思っていました。すいません。
ぺんてるとサクラのオイルパステル比較
●クレパス・スペシャリスト
(サクラカラー・CRAYーPAS Specialist)
クレパスは、言わずと知れた学童用のオイルパステルです。
その扱いやすさで、学校指定の画材となっていることも多い製品。
クレパス・スペシャリストはそれの専門家用で、良い顔料を使っているのだとか。発色と耐光性に優れたクレパスです。専門家用とのふれこみ通り、学童用のクレパスよりも発色良く、色数も多く、また、塗った時に出るカスも少なめなので画面を汚しません。
色数85色、単品価格は129円とオイルパステルの中ではお手頃価格なので、私も他のオイルパステルと併用して使っています。ふんだんに、気兼ねなく使えるので。
こちらはメーカーの製品紹介ページです。
↑こんな感じで、一本づつに耐光性表示(+++は堅牢度が高い方です。4段階中の3ということ。色によって違う。)やピグメント(顔料)の表示がついています。他の面には、CEやAPの表示がついていて、毒性のないことを示しています。安全面でも安心ですね。
こうした表示は、専門家用の絵具やパステルなど顔料を使用した画材についているもので、顔料によって異なる特性が記号で示されているのです。絵具の場合はこれに、顔料のグレードや乾燥速度、透明度とかが加わってきます。
表示について詳しく知りたい方は、ホルベインのWebサイトに掲載されているので参考にしてください。
●「オイルパステル forArtist」(ぺんてる)
ぺんてるといえば、あの男の子と女の子が向かい合って絵を描いているイラストのクレヨン!私も子どもの頃使っていました。クーピー(サクラ)とパスティック(ぺんてる)、クレヨンでもサクラカラーとは常にライバル関係のメーカーだと言えるでしょう。
しかし、文具に強いぺんてる も、画材というと、サクラカラーの方がリードしている印象です。オイルパステルにおいても、やはり絶対王者”クレパス(CRAYーPAS)”という知名度にはなかなか及ばないといった感がありましたが、昨今の チョークアートブームでずいぶん使用している人が増えたような気がします。
ぺんてるの専門家用のパステルは、日本チョークアート協会推薦の画材なんですね。
この製品には、クレパススペシャリストのような個別の表示はありません。また、ぺんてるのホームページにも詳しいことは記載されていないので、不明点が多いんです。なんで掲載しないんでしょう??
が、カラーバリエーションのところに「インキ色」と書かれているので、使用されているのはもしかして染料だったり…。
色によって質にばらつきのある顔料と違って、インク色ならば、比較的均一な質が保持できるからです。耐光性には疑問が残りますが、顔料特有の毒性はないので、安全性は問題ないと言えるでしょう。多分。
色数49色、単品価格は???です。単品で売られているのかしら?楽天市場で一本149円というのを見かけましたが、希望小売価格は分かりません。多分サクラと同じだと思うんだけど…。
クレパス・スペシャリストの方がちょっと高いだろうと思い込んでいた為、「ぺんてる意外に高いな…」というのが率直な感想です。セットだと25色2500円〜3500円ぐらい(市場価格)でサクラカラーのクレパス・スペシャリストと同じ価格帯。
ぺんてるとサクラのオイルパステル比較
1、見た目の比較
クレパス・スペシャリストもぺんてるのオイルパステルも四角タイプのスティック形状をしています。長さは同じですが、クレパス・スペシャリストに比べてぺんてるの方が細いですね。およそ2/3ぐらいな細さ。
その分「容量が少ない」わけですが、実際に使ってみると、ぺんてるのオイルパステル は、結構硬めなので、クレパス・スペシャリストと比べると減りが少なく、コストパフォーマンスは同じくらいに感じられます。
どちらも四角い形状をしているので、角を使って細かい部分を描いたりすることもできますが、ぺんてるの方が硬めで細いので、細かい作業が得意です。ただ、私は筆圧高めな上に我を忘れてガジガジと塗ってしまうことがあるので、何本かはボキボキに折れてしまい、あまり繊細な作業ができない状態になってしまいました…。後悔しています。
2、色調の比較
↑24色セットでの比較です。
●セットカラーの特徴
色名が、ぺんてるは「バーミリオン」や「カーマイン」に対して、サクラは「カドミウムオレンジやカドミウムレッド(ヒュー)」というのを見ても、ぺんてるはクラシカルで渋めな色調で、サクラは鮮やかで派手めな色調を目指しているのでしょう。
大きな違いとしては、ぺんてる のオイルパステルには、「SandalWood」と「MaderPink」というベージュ系の2色が含まれているところ。この2色はポートレートを描く際にはとても便利です。また、「セピア」「テラコッタ」「オリーブグリーン」「ピーコックグリーン」など、24色セットでは珍しい色がラインナップしていて、個性的です。
一方で、サクラカラーのクレパス・スペシャリストは、隙のない色相環のラインナップで、過不足なく、何を描くにも困らない。特に、赤系の色相がぺんてるに比べると豊かです。
●質感と色調
全体的に、ぺんてるのオイルパステルは均一の質感で、不透明でマットな質感です。
比べて、サクラのクレパス・スペシャリストは、発色が良く、また、色によって質感や透明感が異なります。
↓グレーの紙に塗ったところ。ぺんてる の方はどの色も均一に不透明です。サクラの方は白が混じった色は不透明ですが、透明色が結構あります。
隠蔽力は、どちらのメーカーも「まぁまぁ」です。白で上から塗っても、完全には消えません。白だけで言うなら、クレパス・スペシャリストの方が上です。
↓鉛筆とパステルの上から白で塗ったもの。上がぺんてる、下がサクラカラー。
↓色の比較。コバルトブルー(ヒュー)とビリジャン(ヒュー)
色の本質は白を混ぜるとわかる!らしいですよ。
コバルトブルーの方は、画面上だとちょっと違いがわかりにくいですね…。実際は、クレパス・スペシャリストの方が明るく彩度も高いです。ぺんてるのオイルパステル は落ち着いた色です。
ビリジャンの方は、ぺんてるはビリジャン、サクラはビリジャンヒューです。
※ヒューは「似せて作った色」という意味です。現物の顔料がお高い物はこうした「ヒュー」とか「チント」とかがついた絵具が作られます。
ぺんてるのビリジャンは、不透明色です。実際のビリジャンに比べるとちょっと色が浅いですね。それと、ビリジャン特有の透明度がないのでだいぶ印象が違います。色相を近づけてもそこは難しいところなんでしょう。
クレパス・スペシャリストの方は、青みがかったグリーンで、いわゆる一般的な「ビリジャンヒュー」です。
3、描き心地
ぺんてるのオイルパステル は、硬く、伸びがいまいちですが、細かい部分は描きやすいです。また、滑らずにしっかりと色がつくので、上質紙やコピー用紙みたいなツルッとした紙でもしっかりとした仕上がりになります。
クレパス・スペシャリストは柔らかく、伸びも良いので、素早く作業が進むので、直感的に描けます。滑らかな紙だと、色を重ねると滑ってしまうので、少しざらついた紙か、定着剤を吹きかけながら作業をする方が良いです。クレパスそのものでは細かいことは出来ないので、削ったり、色鉛筆を使ったりしながら細かい部分を描きます。
4、実際に描いてみました
↑チョークアート風に暗めのカラーの紙に描いたところ。右がペンてる、左がクレパススペシャリスト。
クレパス・スペシャリストも悪くはありませんが、ぺんてるの不透明でしっかりと色が乗っている感じは、黒地に映えます。
↑画用紙に描いたところ。左がぺんてるで、右がクレパス・スペシャリストです。
これはもう、クレパス・スペシャリストの方が圧倒的に描きやすいです。細かいことが出来ないので、自由な線になりますし、なんせ、色が伸びるので作業が早い。一方、ぺんてるの方は、丁寧に仕事を重ねて完成させていく感じです。(この作品の制作過程はこちら)
ぺんてるとサクラのオイルパステル比較まとめ
比べてみると、結構違いがありました。
ぺんてる は、繊細な作業と均一な面を作るのが得意です。
サクラは自由なクリエイティブな線や面を作っていくのが得意なようです。
自分の描きたい作品に合わせて選びたいですね。
最近では、ファーバーカステルもこの価格帯よりさらに安くオイルパステルを販売していますが、あまりに安すぎてビビって購入していません。そのうち試してみたいと思います。
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